デジタル制御電源再び
年度末が終わった4月は毎年暇なんですが今年はとても忙しいのです.理由はパワエレの大きなお仕事に取り組んでいるからです.
お客様のお話によると,全世界的にEV車への大きな流れの中でパワエレ・エンジニアが不足しているとのこと.しかも大学でパワエレを学んだ新卒者は年間200名ほどで全く足りていない.
私が電源を一生懸命やっていた15年ほど前は,外注に出すと安くなるからという理由で仕事がアウトソーシングされていました.当然ながら受注金額はぎゅうぎゅうと絞られたものです.そしてあの頃良く言われていたのは「士農工商,電源屋」というフレーズでした.とにかく技術的には面白いものの,商売としてはなかなか難しい感じでしたね.でも今はガラリと変わっています.
今の案件はお客様とNDAを結んでいるので詳しいお話は一切できませんが,今までに見たことも無い回路です.これは久々に興奮です.しかも画期的なのはコア材.その新しいコア材によるトランスはまだ手元にはありませんが,まずは回路の動作検証用にありあわせの手元の部材で実際に組んでみました.
spiceでは動いていますが,これまで見たことも無い回路だったので少し半信半疑な部分もありました.でも実物が安定に動いているのには本当に驚きでしたね.写真は回路のある部分の波形です.
駆動に使ったPWM波ですが,テブナンの定理に基づく理想波形が欲しいのでファンクション・ジェネレータとバイポーラ電源の組み合わせで作成しました.バイポーラ電源はNF回路設計ブロック社製で10MHzの帯域があります.
PWM波は直接スイッチングで作成する方法も有りますが,何か変な動きがあった場合に原理に問題があるのか区別がつきません.ですから原理検証時にテブナンの定理に基づく理想波形で検証しておくことはとても大事なのです.
バラックで組んだ回路ですが,色々とイタヅラをすると面白い挙動を見せます.これが技術的な大事なヒントを与えてくれます.あともう少しバラックで遊んでそれから本格的な試作過程に入ります.出力は数kWで電流は最大200Aにもなります.
制御はデジタルにします.Cで書くデジタル制御なら負荷率に応じて時定数を変えるなど簡単な事です.また保安動作などのシーケンス制御との融合もシームレスです.そういえば,電源のデジタル制御が一般的でなかった15年前,富士通のMB3759というアナログICで苦労しながら制御を組んでいたのが懐かしいですね.