ディスクリート回路

例えばつぎのOPアンプの中の回路って皆さん読めるでしょうか?これはアナログデバイセズ社のOP07の内部回路です.もともとはPMI社ですね.

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私たちの時代のエンジニアは普通に読めますし,一つ一つトランジスタの動きが手に取るように解ります.なぜならOPアンプは登場していたものの,まだまだ普通に個別トランジスタで組んでいたからです.

オーディオの世界では,今でもディクスリート回路が根強く残っているので,この方面のエンジニアなら読める人は多いでしょう.

さて現代においてこれを読む必要があるのか?という疑問もあります.でもOPアンプだけでは達成できない性能を目指すには,やはりディクスリート部品を自由に使いこなせる力が重要になります.そしてそれが差別化になります.

ちなみにこのOP07は3段増幅回路です.1段目はQ1とQ2,2段目はQ11とQ12で,3段目はQ18です.
3段増幅は高オープンループゲインが得られる反面,位相回転が大きく発振しやすい欠点があります.それをOP07はC3とR5によってフィードフォワード制御を行い,高い周波数は2段目を飛び越して1段目と3段目が直結される仕組みになっています.

今の時代は全てをディクスリートで組む必要はありませんが,OPアンプに少し組み合わせるだけで,驚くような高性能な回路が出来ます.例えば,次の回路はリニアテクノロジ社の伝説のアプリケーションノート47のFig61です.

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A1のLT1223は100MHzの高速電流帰還OPアンプです.電流帰還OPアンプは高速である反面,入力バイアス電流が大きいという欠点があります.そこで超高速J-FETのソースフォロワのQ1と組み合わせて,高速性と高入力インピーダンスを両立させています.J-EFTはVHF/UHF帯の2N5486です.

この回路の唯一の問題点は2N5486のVgsによるオフセット電圧です.これをA2のLT1097によるサーボ回路でQ2の2N3904の電流を制御しQ1を常にゼロバイアスにしています.つまりFig61の回路は,Q1のゲートからA1の反転入力端子までが完全に同電位になります.同電位点を非反転入力ではなく反転入力端子にするのは,A1の持つDCオフセットも含めて吸収できるからです.

昔はディスクリート部品しかないので,ディスクリートで回路を組むことが当たり前でした.現在は便利なICが溢れており大体の事がその組み合わせで出来ます.そういう時代のエンジニアにとってはディスクリートは難しい技術の一つになっています.

これからは働き方が大きく変わる時代です.そして安定雇用の昭和型はどんどん消えるでしょう.自分の市場価値を高め自分の雇用を守るためにも,今あえてディスクリート技術を身に着けて,ハイレベルエンジニアになる事は,とても良い戦略かもしれませんね.

引用文献
OP-07 datasheet analog devices
Application Note47 linear technology
※アナログ・デバイセズ社許諾済