雑音のお話し
昨年のアナログ技術セミナーでは雑音のお話しをしました.雑音と言っても外来ノイズによる妨害波ではなく,熱によって抵抗や半導体が出す雑音の事です.
雑音の大きさはおおよそnV~μVです.小さいと言えば小さいのですが,例えばセンサー信号がmVで雑音がμVだと,その差であるS/N比は60dB程度になってしまいます.ADコンバータの解像度で言えば10Bit程度でしょうか.
ですから微小なセンサー信号を増幅するには,アンプによる雑音の増加を極力抑えなければなりません.出来ればS/N比は12Bit以上の80dBは欲しい所です.
高ダイナミックレンジの回路を設計するには,エンジニアは常に雑音の事を意識する必要があります.幸い雑音理論は確立されているので,理論通りに計算すれば簡単に目的の回路を作り上げる事が出来ます.
巷には雑音の事を書いた解説本やWebページはとても多いのですが,意外に実測の紹介は少ないので,昨年のセミナーは実測にスポットを当てました.
弊社で使っている計測器はHPの89441Aと小野測のCF360です.CF360は買ってもう22年の長い付き合いです.今では貴重な1mVというレンジあがあり,オーバーオールしながらとても大事に使っています.
それぞれの計測器の入力換算雑音は,89441Aが10nV/√HzほどでCF360は30nV/√Hzくらい.
89441Aは10MHzまで測れるものの1kHz以下では1/f雑音が大きく,どちらかというと1kHz以上で使う感じす.
逆にCF360は100kHzまでしか測れませんが,下は1Hzであってもほぼフラットなので,1kHz以下の評価には断トツにこの機種になります.
さて回路の雑音測定ですがこれは意外と簡単です.DUTをシールドBOXに入れて入力を信号源抵抗で終端し超低雑音電源で駆動します.
そして出力をFFTアナライザのパワースペクトル密度モードで測れば終わりです.入力換算雑音値を求めるには計測値をアンプのゲインで割ります.
オーディオで有名なNE5534の雑音を測ったのが下記です.理論値と実測値がピッタリ合っているのが解ります.(アンプのゲイン40dB)
信号源抵抗(Ω) | 計測値(nV/√Hz) | 理論値(nV/√Hz) | グラフ色 |
100 | 3.02 | 3.73 | グリーン |
1k | 5.02 | 5.38 | ブルー |
10k | 14.7 | 13.9 | オレンジ |
100k | 53.6 | 57.2 | イエロー |