初めて買ったソフトPSPICE
自分で初めて買ったソフトはPSPICEのCQ版です.91年頃ですね.ちょうど32bitのPCが話題となり,勤めている会社にも事務用にPC9801-RAが導入された時期です.私のいる設計部門にはCADとしてPCは早くからありましたが,16Bit機で遅くソフトの操作性も悪いので嫌々使っていた感じです.たしか東芝のパソピア1600でMS-DOSは2.0でした.
そもそもこの時代のPCはハードもソフトも全てにおいて未発達な状態.しかも高価.手書きで書類や図面を書いていた方が遥かに仕事の効率が良かったのです.だからPCなんて厄介者という感じでした.でも時代は流れて現在はほぼペーパーレス.まさかPCがこんなに便利になるとは思いませんでしたね.
そんな時にトラ技で特集が組まれたSPICEの記事.驚きました世の中に回路シミュレータなるものがあるなんて.この記事は夢中になって読みました.そして6000円ほどでCQ版のSPICEが買えるとのこと.さっそく購入しました.
到着したのが5インチのフロッピー3枚と印刷された1枚の紙.紙には「中のテキストを読んでください」と素っ気ない事が書いてあるだけでした.取説も無く不親切だと思いましたが,同時にこれが新しい時代のやり方なんだとも変に納得もしていました.
さて,そのテキストを読むには何をすればよいのか?これがさっぱり解らないのです.CADとしてこれまでPCを触っていましたが,電源を入れるだけでCADが立ち上がるようになっていたのでDOSを操作方法を知しりません.
で,SPICEを使いたい一心でMS-DOSを必死で勉強しました.するとPCの世界には,Autoexe.batやconfig.sys,数値演算プロセッサ,RAMドライブ,エディタのMIFES,ファイル管理のFD,ノストラダムスの空飛ぶ絨毯,ゲームの上海など,とにかく面白いものがいっぱいあるんですね.そのうちSPICEだけでなくPCそのものにも夢中になっていきました.今思い返してもこのころのPC遊びが一番面白かったと思います.
でもPCはまだ70~80万円もする時代で一太郎も10万円でした.ですからもっぱら業務の間に会社のPCを使ってDOSの勉強とSPICEの動く環境を構築して行きました.
それから自分でPCを買ったのは価格も少し手ごろになった93年か94年です.98ノートを買いました.やっと自分のPCが手に入りさらにSPICEに没頭してゆきました.これが相当回路屋としての自分を鍛えてくれたと思います.
ただ実物の回路とシミュレーションの違いにも気づき,一時期はシミュレーションモデルの作り込みにも挑戦しましたが,それよりもさっさと実物の回路で実験した方が早いので,私の中ではSPICEは傾向の把握という感じで使うようになってゆきました.
あれから20年以上.もう5インチのフロッピーは読めませんが,初めて買った記念ソフトとして大事に残してゆきます.