B&K4006マイクロフォンが壊れる1
オーディオ趣味というと一般的には再生系になると思いますが,私の場合は録音に興味があります.実物の楽器の持つダイナミックな音をどう記録し再生するか,ここに面白さを感じるのです.
私の友人に学校の先生がおり,その伝手もありもう20年近く中学や高校から依頼を受けては,アマチュアながら吹奏楽部の定期演奏会の録音をしておりました.
私がメインに使っているのはB&K4006(現DPA社)の無指向性マイクです.これは今や世界中のクラシック録音の定番マイクで,例えばテレビのN響やテレ朝の「題名のない音楽会」を見ると,天井から吊ってあるのが確認できます.
B&K社はデンマークの古くからの音響計測器メーカで,最近まで音楽録音用のマイクは作っていませんでした.そんな80年代初頭にデンオンのレコーディング・プロデューサーの穴沢氏が,計測用のマイクを使って録音をしたところとても素晴らしい録音だったため,同社に製品化を働きかけその後音楽録音用がラインナップされました.(古いラジオ技術誌の穴沢氏のインタビューから)
B&K4006で録音されたCDは群を抜いて透明感と解像力があり,中でもデンオンのマーラーシリーズは有名な録音です.私はそのB&K4006を1992年にボーナスをはたいてワンペア買いました.当時アマチュアでこれを持っているのは私で2人目であると輸入代理店の方がおっしゃっていたのを覚えています.
さて先日の事ですが,久しぶりに通電すると音が全く出なくなっていました.それも2本とも.購入から25年なので仕方がないのかもしれません.最初はマイクカプセルのエレクトレットの電荷の抜けかと思いましたが,この4006が開発された時代は既に半永久のエレクトレットが登場しており,電荷の抜けは考えにくい.
原因を探るべく何度か電源をON-OFFしていると,そのうち1本から音が出るようになりました.でも小音量でひずみっぽい感じです.次に中の回路を抜いてもう一方に入れ替えると,音の出ない方も音が出るようになりました.このことからマイクカプセルではなく中のプリアンプに問題があることが解りました.
もうこの時点で粗方予想は付いています.この種の壊れ方はきっとケミコンだろうと.で中のケミコンを仮設で交換したところ無事に2本とも直りました.
でもここで終わらないのが電子エンジニアの性.せっかくだからと回路図を書き起こして内部回路の解析を始めました.(つづく)