デジタル制御電源のセミナー
今デジタル制御電源が広がりつつあります.特に大型電源ではその傾向が加速しています.デジタル制御にするとフィードバック制御に細かく介入できるので,運転状況に合わせてパラメータを逐次変えて効率や安定性を高めることができます.
そもそもアナログ制御とデジタル制御の違いは何んでしょうか.アナログ制御は抵抗やキャパシタやダイオードやOPアンプの動作つまり電気物理の法則の組み合わせで制御を構築します.それに対してデジタル制御ではソフトウェアで「こう動いてください」と直接記述出来るので,物理法則に捉われない独自のアルゴリズムが可能です.
例えばデジタルカメラの人の顔を判別するアルゴリズムはアナログ回路では不可能でしょう.これはデジタルならではのアルゴリズムです.デジタル化による独自アルゴリズムは商品力を高め競合との差別化になります.
過去,トランジスタ技術誌の2008年7月と9月号において「デジタル制御電源で何ができるか」を執筆し,CQ出版社とポリテクセンターでデジタル制御電源のセミナー行ってきました.
ポリテクセンターでのセミナーは2日間の実践的な内容となっており,一人一人にデジタル制御電源ボード,PCとソフトウェアの開発環境,オシロスコープ,電子負荷装置などの教材が用意されます.
講義はDC-DCコンバータの理論とフィードバック制御の理論,そしてマイコンチップの詳細を学びます.実習はPWMの実験,ADコンバータの実験,DSPエンジンの実験,フィードバック制御のソースコードの記述,そして完成させたDC-DCコンバータの総合実験があります.DC-DCコンバータの実験では,フィードバック制御の安定判別をネットワークアナライザを使ってボーデ線図で評価をします.
普通マイコン制御というと「スイッチを押してランプがピカピカ」というシーケーンス制御をさします.ですがデジタル制御電源ではフィードバック制御のリアルタイム信号処理を行います.そしてこの信号処理アルゴリズムをソフトウェアで記述します.
デジタル信号処理はマイコンに慣れているデジタル系エンジニアでも苦手としている人が多く,また逆にアナログ系エンジニアは信号処理は理解できるけれどマイコンやソフトウェアを苦手としている人が多く見られます.私のセミナーはその両方のエンジニアさんにも理解してもらえるような工夫をしています.
ポリテクセンターでのセミナーはその時代背景もあり常に満員の大盛況でしたが,私の本業の多忙も重なりここしばらくは中止をしていました.さてそろそろ何らかの形で再開を考えています.